おはようございます、小野です。
今日は、相談を頂いた浦安市内の床屋さんへ訪問してきました。
この床屋さんはご夫婦で経営されており、
お二人とも地震直後は傾きを感じていなかったそうです。
しばらく経ったある日、店舗のキャスター付き収納が自然に転がり始めたことで、
建物が傾いていることに気が付いたそうです。
市の損壊判定は「半壊」でした。
ちなみに、
「半壊」住宅で受けられる支援金は、
義援金 50万円、
傾き修正による支援金が、県から100万円、市から100万円
家屋補修のみの場合、県から25万円、市から25万円
となります。
実際に訪問して、水平レーザー測定器を用いて沈下量を計測したところ、
1階フロア約80?の家屋の角から、対角線反対方向およそ12mに対して約80mm沈下していることが分かりました。
この13mに対して80mmの沈下は、6/1000という傾斜数値で表されます。
そして6/1000という数値は、ちょうど人間が傾きを感じ始めるぎりぎりの値です。
要は、被害はあるが極めて軽度であるということです。
この店舗の基礎形状は“布基礎”だったため、
一番安価に建物を水平にする、『土台上げ工法』で決まりだと確信しました。
しかし、建築当時の図面と、写真を確認するとその確信も束の間、すぐに不安へと変わってしまいました。
実は、店舗の一部をあとから増築しているため、通常の建物とは違い、基礎が一体ではありませんでした。
更に厄介なことに、店舗部分(1階フロアの半分)と、住居部分(1階フロアの半分と2階フロア全部)の床の高さが異なり、
店舗の床は基礎の上に直張りで、住居の床は建物の土台の上に造作されていました。
これでは、土台上げ工法を行う場合、
店舗の床は持ち上がらず、室内の壁のちょうどコンセントや設備のある高さ(コンセントがあるということは、その壁の内側には電気配線が通っている)に、ぐるっと一周亀裂が入り、
土台から建物を持ち上げた際には、その亀裂が数センチ持ち上がることになり、修復に多大な費用と時間を費やすことになってしまうだろうと思いました。
そうなると、工事期間の営業は事実上困難となってしまうため、
その分、更に工事費用が高くなるようなもので、この土台上げ工法はやめましょうという提案になりました。
そして代替案として、
建物の被害が軽度である(傾きも少なく、目で見える外傷もなく、ドアも問題なく開閉できる)ため、
無理をして高級な工事費用を支払ってまで、傾きを修復するのではなく、
室内の床を傾きを水平にしながら張り直すということで提案させて頂きました。
実際に、地震後初めて水平レーザーで傾きを測った結果をご覧になり、ご自宅が危険な状態でないことを知り、ご安心頂けたのか、
その提案が一番しっくりくるということで、胸を撫で下ろされていたように感じました。
このように、
それぞれのお宅によって被害程度が違い、症状が違い、生活が違い、懐具合が違うため、
復旧するための提案は常に変化していくものだと私は思います。
直すための方法は一つではございませんので、
このお話が一人でも多くの人に届けばいいなと思っております。
また、報告させて頂きますのでよろしくお願いします。