これまで、「杭」で液状化被害を防ぐことができないをテーマにお話しさせて頂きました。これまで既にお伝えした2つの理由というのは、
- 杭を打っても傾いてしまう可能性が高い
- 振動が杭を伝わり、建物の破壊被害が拡大する
「杭」で液状化被害を “防ぐことができない”のではなく、“防ぎきることはできない”ということなのです。だから、それは裏を返せば、家が傾かなければ、破損もしない可能性だって十分あり得るということなんです。そして、多くの方がそうなることを望んで、「杭」での液状化対策をお考えになるのだと思います。
しかし私は、杭で液状化被害を防ぐことはできないと言い切っています。それは、なぜか?皆さんは、「抜け上がり」と呼ばれる被害をご存知でしょうか?もし、あなたが浦安にお住まいということでしたら、おそらく既に目にされているはずです。
下の写真は、新浦安のイトーヨーカドーの震災時の写真です。
建物が地面から浮き上がっているのがわかりますか?これが、「抜け上がり」という被害です。私も実際に足を運んでおりますが、地面と建物に50cm以上の高低差が生じました。建物の大きさもあり、とても大きな衝撃を受けたと覚えています。では、なぜこのようなことが起こったのでしょうか?
それは、「杭」を打っていたからなんですね。
東日本大震災で、浦安市は平均20cm以上も地盤沈下しました。覚えて頂きたいのは、液状化と地盤沈下は常にペアで発生するということです。そして、それが「杭」で地盤改良した家に被害をもたらすのです。
杭で支えられた家は、液状化による周辺の地盤沈下によって、宙に「抜け上がり」ます。
こうなると、建物の真下は空洞となるため、地面という安定した支えを失い、杭の上に乗っかっているだけの大変危険な状態になってしまいます。これでは、大きな余震や、連動した大地震が発生した際、杭が折れるなどの可能性も大いに考えられます。この現象、浦安市内のマンションにとても多く見られました。
そして、私の住んでいた8階建てのマンションも、同じように抜け上がり、震災後には、1階エントランス入り口に 階段3段分の段差 が発生しました。このように、ちゃんと「杭」が作用し、傾きを防ぐことが上手くいっても、液状化による被害を避けることはできないということです。