前回までの記事でもお伝えしたように
ヨーロッパは世界で一番、建築基準が厳しい地域のひとつです。
そのヨーロッパに建てられるような断熱・気密性能を持つ家(つまり省エネ性能の高い家)は、
日本の市場で出回っている住宅全体のなかでも、…たったの1% 程なんだそうです。
だったら、この1%の方で建てたいとは、思いませんか?
…ただし、この1%の家、めっちゃ高いですっ。
この家は、通称「パッシブハウス」(詳しくはこちらの書籍をご覧頂くと分かりやすいです)と呼ばれていますが
このパッシブハウスは、非常に高価な住宅で…
例えば、40坪 / 2000万円くらいで建てられるのが日本で一般的だとすると、
同じ広さの家をこっちで建てようとすると、大体4000万くらいします。
よく言われる「坪単価」で、およそ100万円です。
…こんなの買えますか?
というか、買わないでしょ。
だから、そうやってちゃんと建てる工務店って全国で1%しかないんですよ。
だって、やったって儲かりゃしないんですもん。
だから、その他の「99%」の住宅屋さんは、
『誰でも買いやすい価格』にするために、安価な方法で建てるわけです。
そして、ここには “大きな問題” があって…
それは…『断熱材』が満足に入っていないってことです。(ここでいう満足とは、ヨーロッパと比較した場合のことです)
『断熱材』って家全体に入るものだから、占める面積が大きいんです。
だから、性能の悪い安ものだったり、厚みを薄くすると、家一件の価格を大幅に落とすことができるんです。
あと「窓」なんかも同じですね。
だけど、そうやってできた「断熱の弱い家」はどうなるか想像ができますよね?
…どうなると思いますか?
そうです。さっき言ったように「命に危険なほど」寒い家になります。
でね、知っておきたいことは、
「家が寒い」ことが、最初に話した「家の寿命」を短くしているってことなんです。
でもこう言うと、多くの方から、
「家が寒くて、人の寿命が短くなる」ことは、まぁなんとなく分かるんだけど、
「家の寿命が短くなる」ってのは、ピンとこないというか、
あまり良く分からないって言われるんですが…、皆さんは、どうですかね?
この理由って、どんなものか想像できますか?
寒い家っていうのは、ほぼ間違いなく、窓や壁が冷たくなっています。
だから、どんなに暖房して、お部屋が20℃とかになっても、
窓や壁の近くにいると…めちゃ寒いんですね。
窓とか触ってみると、よく分かりますよ。外の気温と同じくらい冷たくなってたりします。
すると、何がおこるか?というと…
びっしょり、水滴が付き始めるんですね。
これ。皆さんも、ご経験ありませんかね?
この現象は「結露」と言いますが、実はこれが家の天敵なんです。
結露が毎年毎年繰り返されると、
…やがてその周辺は、カビやダニが棲み家になってしまいます。
でもね、これが窓で起こる分には、まだマシだと思うんです。
なぜかと言うと、窓は「目に見えるところ」だから、
小まめに拭き取りさえすれば、予防できるからです。
だけど、今一番、何が問題かっていうと、
「目に見えない」ところで、これと同じことが起きてることなんです。
どこか?
それは、「壁のなか」なんですです。
窓に比べると、壁には分厚さがあります。
それだけで外の熱は内側に伝わりにくくなりますね。
だから、内側の壁の表面温度って、窓ほど冷たくならないですよね?
だから、壁の表面に結露が見られることは滅多にありません。もし、そうなら「よっぽど」です
しかし、どんなに分厚い壁も、外側になればなるほど、だんだん温度が低くなるので、
壁の中のどこかで、窓と同じくらいの温度になるラインがあるはずなんです。
そこが「露点」と言って、結露するポイントなんです。
そして、壁のなかで結露が発生することが、
どれだけ恐ろしいかと言うと…
壁の中がカビやダニの棲み家になり、
ついには、土台や、柱などの、
家の主要となる構造体を腐食させる原因となるんですね。
どうですかね。こんな状態で、住み続けられますか?
こんな状態だと分かれば、誰でも不安だと思います。
だからと言って、直すにしてもお金が掛かり過ぎちゃうから、
「だったら」って、みんな建て替えちゃうわけです。
別に今の基準(次世代省エネ基準)で建てるのが悪いとは言いませんが、
こういうことを覚悟して、30年後に建て替えるのか?
最初の出費は増えるかもしれないけれど、壁のなかまで暖かい家を建てて、最初から長寿命な家を建てておくのか?
ちゃんと、考えて選んで欲しいんですね。
『日本の家はヨーロッパに建てられない』ということでしたが、
どうして、made in japan の製品は世界中で認められているのに、
家の品質には、それほどの差が生じてしまったのでしょうか。
次回につづく