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スーパーマンに教えてもらったもの

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昨年社員の一名が退職いたしました。弊社にも定年退職に関する規定は存在していますが、形骸化しており、定年退職するものを見たことがありません。その社員の退職は、定年というよりは勇退に近いものでした。私の年齢よりも長く明和地所を支えてくれていた仲間であり、スーパーマンと呼べる存在でした。いつも明るく、元気なその人はお客様からは当然、社員からも社外の人からも愛されていました。

逸話を思い出すときりがありません。二つの受話器を同時に耳に当てながら電話応対をしたり、常人ならば逃げ出したくなるようなトラブルも笑いながら解決してしまったり、その手腕や胆力は特別でした。そして、どんなときでも上機嫌なその人は、社内の空気感が悪くなれば、自然に和ませてくれたりもしてくれていました。そんな尊敬と同時に愛すべき偉大な先輩を持てたことは私の生涯の財産となっています。本当にありがとうございました。

そんな人との退職に向けた相談の場面において私が思い返していたのは「天才を殺す凡人」(著者:北野唯我)という書籍の内容でした。

「天才は変革の途中で凡人、君らに殺されることがある」

「組織には天才が率いる時代がある。だども(原文ママ)、その時代が終われば、次は秀才が率いる時代が来る。その時、組織は凡人が天才を管理する時代に突入する。そして天才は死んで「イノベーション」を起こせなくなる。」

詳しい内容は割愛しますが、ざっくり要約すると以下の通りです。
まず、組織内には大別して「天才」「秀才」「凡人」の3種類があります。それぞれの間には相互理解を阻む断絶がありながらも、時に有益に機能しあうと同時に、時に反駁しあうというものです。それぞれの特徴については書籍内では以下のように説明されています

天才:独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人

秀才:論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人

凡人:感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人

それぞれを一言で換言するならば、天才→創造性、秀才→再現性、凡人→共感性、となると思います。

私は自己分析の中では「秀才になろうともがく凡人」だと思っています。特に卓越した能力や特性があるわけでもなく、全体の空気感を鑑みながら、効率化や規範化を暗中模索しているという表現が一番しっくりきます。一方、退職してしまった当人はまさに「天才」であったと思います。再現を可能としない独自性に基づく圧倒的なパフォーマンスがありました。

だとするならば、最終的に退職に至らしめた(天才を殺してしまった)のは、ほかならぬ私だったのでしょう。業務効率化をすすめようとし、システムやルールを策定し、業務の均一化とベースアップを図るということを推し進めてきたことは、裏を返せば、天才の独自性や特殊性という天才たる事由を奪うということでもあります。天才からすると、どんどん動きづらくなっていたのでしょう。そんなことを考え、感じながら自責の念を同時に感じざるを得ませんでした。

ただ、同時に失った仲間や過去の判断を嘆いても未来は拓けません。それらを糧にして、これからどうしていくか、それこそが今なすべきことです。幸いなことに、社内にはいまだ多くのスーパーマンと呼べるような才気に富むものがいます。変化に対応する能力が高く、常に時流に応じた最適な対応を個別にも全体にも起こすことができる者。危機管理能力に長け、組織全体のバランスを適切に保つことができる者。率先して未踏の分野に飛び込み、後続の規範となるべき道を率先して創る者。意見集約能力に長け、組織の不平や不満を業務改善に昇華させることができる者。献身性にあふれ、組織の機動性や弾力性を下支えする者。などなど、挙げればきりがありません。

社会的な定義はさておき、個人的には「天才」っていう言葉の定義は案外広いものであって、「新しいものを作り出す」というものだけが唯一の定義ではないと考えています。状況や場面が違うことで、いろんな「天才」がいるもので、いうなれば、「特性や性質、才能」に近いもの」という理解が個人的にはしっくりきています。才能や個性というのは、強みであると同時に弱みにもなりえます。無能な人間などいるはずもなく、誰しもどこかで活躍できる能力をもっているはずです。もし、活躍しきれていない人材がいるとすれば、それはその人材配置をしたものに改善の余地があると解するべきです。組織内での多様性を重んじるということは、きっとそういうことなんだと今は考えています。

アフリカのことわざにこんな言葉があるそうです。しばしば政治家がスピーチに引用したりしているので、ご存じの方も多いかもしれません。

早く行きたければひとりで行け、遠くに行きたければみんなで行け

例えば変化の目まぐるしい成長分野においては事業スピードは何よりも重要なものなのかと思います。効率的は何より重要な要素であり、効果的な事業を進める上では一人の天才が必要なのでしょう。しかし、私たちのような地域に根差した不動産業者は、早く到達することが最優先課題ではないと思います。長く地域に求められ、貢献し続けることができるような存在であるためには、効率性よりも、永続性が必要であり、そのためには多様性に満ちた「みんなで行く」ことこそが必要なのだと感じています。そしてきっとそんな「誰かの弱みを誰かの強みで補い合う組織」はとっても強いはずです。

そんな考え方が弊社の企業理念の一端である「四方よし」に込められているんだと、改めて感じ入っています。お客様に求められ、社員が幸せに、会社も永続し、地域に貢献するということの価値を、最近になってようやく深く理解できてきているような気がしています。

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ライターについて

不動産業界には海千山千の人間が多くいます。私もこの業界にいることでオモテヅラだけがいいと感じる人に多く会ってきました。時に人を信じるということはとても大事ですが、その人がどのような状況に身を置いている人なのか、そして自分が今どのような状況に置かれているのかを冷静に俯瞰することで、より良い不動産取引体験につながることと思います。今回のコラムを読んだ方が一人でも不幸な不動産体験から縁が切れることを願って止みません。

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