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顧客の創造

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企業の目的って何だろう。

売上を上げること
シェアを取ること
顧客に喜んでもらうこと
社会に貢献すること

定義はいろいろあると思います。
ピータードラッカーによれば、企業の目的は「顧客の創造」らしいです。

様々な定義が存在する中で、ドラッカー氏の定義を弊社に当てはめると、最近ようやくそれに近い事例を見ることができるようになりました。

たとえば、弊社が建築し、入居者募集をしているソーラーレジデンス北栄での出来事です。この物件は超高断熱高気密の賃貸住宅で、一般市場からすると特殊な案件です。そうした良質な住環境を背景に、周辺の賃料相場から見ると高額な設定です。高額ながらも、その価格に見合うだけの価値を提供しています。ですが、単に募集し、放置するだけでは簡単には成約に至らない物件です。

そのため、賃貸営業部のみんながどうすればこの価値を理解してくれるお客様に出会い、価値を伝えられるかを試行錯誤してくれています。そんな中の一案として、賃貸のオープンハウス(あらかじめ告知した期間において対象住戸を開放し予約なしで現地内覧を受け付ける販売手法)を企画立案し実行してくれました。当日は賃貸営業部だけでなく、売買部や建築部門も巻き込んで一緒に対応してくれていました。ちなみにオープンハウスは売買物件では一般的ですが、賃貸物件でのオープンハウスというのはほとんどありません。

正直なところ、私は賃貸物件でのオープンハウスには効果がないと考えていました。でも企画立案してくれたことはうれしかったし、オーナーが建築検討で来てくれるかもしれないと考え、止めるようなことはしませんでした。

結果として、完全に私の思い違いでした。
結果当日たまたま通りかがりでご来場いただいた地域の方が、その後1か月かけてじっくり検討してくれて、現地で説明を聞いてくれたコンセプトに共感してくれてご成約となりました。オープンハウスをやらずに、普通の物件と同じようにネット広告だけしてたらこのお客様には会えなかったでしょう。それはまさに、顧客を創造できた瞬間だったと言えるかもしれません。

弊社全体として、顧客創造を実現するために何をすべきか、常に思案を巡らせています。私自身の仮説としては、その答えは「私たちの日常」や「私たちの普通」の中にあるのではないかと考えています。

私たちは、浦安において、住まいに関することなら、一通り対応できるような事業展開をしています。実はこれってなかなか珍しいことなのかもしれません。
賃貸だけ、売買だけ、管理だけ、リフォームだけ、情報誌だけ、などなど、それぞれに特化して強い業者様はたくさん存在しています。
浦安市内において、どのジャンルにおいてもそれなりの規模感をもって対応できる業者というのは珍しい存在だと思っています。

これは私たちの「普通」ですが、この「普通」にこそ当社の魅力が隠されているのかもしれません。
とある全国展開している建築業者の創業代表者からいただいた言葉をしばしば思い返しています。

君たちはいいよな。なんでも対応できて。うちはお客様から相談を受けても、提供できるサービスは『新築すること』しかない。提案ができる幅が限られているんだ。

私たちは、売買をご希望のお客様にであっても、賃貸のほうがその人に合っていれば率直にそう伝えられる。
売買をご希望であっても、リフォームという選択肢をご提案できる。
弊社ではとても普通なことで、当たり前なことでした。
でも、これって私たちの「価値」なのかもしれません。

そもそもお客様は、ご自身で売買、賃貸、リフォームといった選択肢を明確に決断した上で不動産業者に問い合わせてくるのでしょうか。
「住まい」という、お客様の人生を左右するかもしれない重大な決断を下すために、十分な情報や材料が揃っていると言えるでしょうか。
もちろん、そのような方もいらっしゃるでしょう。
ただ、多くの方がこう思っているのではないでしょうか。

「なんとなく最近回りが住宅購入しているってよく聞くし、インターネットとか見てみたらなんとなく気になる物件があったから連絡してみようかな、、、ほんとは買ったほうがいいのか借りたほうがいいのかよくわかんないけど、、、」

「転勤の辞令が出そうだなぁ。せっかく買った家で気に入っているのに、嫌だなぁ。これって売った方がいいのかなぁ、貸したほうがいいのかなぁ、、、よくわかんないから、周りも貸しに出してるって聞くし、とりあえず賃貸の募集の相談してみようかなぁ、、、」

「最近家の設備があちこち古くなってきた。キッチンからも水漏れしだしたし、お風呂も寒いし、リフォームしたほうがいいのかなぁ。そういえば子供たちが独立していってしまってから、二階にもほとんど上がらなくなったなぁ。でも住み慣れた家だし、とりあえずリフォームの相談してみようかなぁ、、、」

「顧客インサイトの探求」とは、マーケティング業界で頻繁に耳にする言葉です。有名な例としては、アメリカの学者レビット氏が著書『マーケティング発想法』(1968年)で紹介した「ドリルを買いに来た人が本当に欲しいのはドリルではなく穴である」という話が挙げられます。

お客様は店員にドリルが欲しいと言ったのかもしれません。しかし、本当に欲しいものが穴であるならば、ドリルは必ずしも最適な商品とは言えません。穴を開けるサービスこそ、提供すべき商品となる可能性があります。これは、お客様との対話を通じて、お客様自身が気付いていない潜在的なニーズに辿り着いた時に初めて、適切な解決策を提示できるという教えだと理解しています。

残念ながら、不動産業界では顧客インサイトの探求が十分に行われず、事業者側の都合に合わせてお客様を分類しているように感じます。そして時には、自社の得意分野に誘導しようとする意図が見られることもあります。実際、ご来店されたお客様への声かけは、ほとんど決まりきったものになっています。

「いらっしゃいませ、本日は売買でのご検討ですか?賃貸でのご検討ですか?」

これでは顧客のインサイトを探ることを最初から放棄してしまっているし、「顧客の創造」からはほど遠いものになってしまっています。とはいえ、業務の流れからこの問いかけから始めるということはあってもいいのかもしれません。この後に続くお客様との対話の中で、違いを生む瞬間を作り出していくことは十分可能だと思っています。

ただ、顧客の創造をかなえるためには、高度な専門知識や経験が求められますが、現実問題として、不動産業界は非常に幅広く、全ての分野を高いレベルで理解することは容易ではありません。仮に可能だとしても、その知識とスキルを習得するには長い年月を要し、全ての担当者がすぐに身につけられるものではありません。ただ、業務に特化した集団内ではその業務のスペシャリストになるということは、比較的早期に到達可能で再現性も高いものです。私たちは、一人ひとりが個としてではなく、社内全体で連携し、専門性を最大限に活かしたチームで取り組むことを大切にしようとしています。これにより、お客様の真のニーズに応えることができ、期待以上の結果を提供できると考えています。このアプローチこそが、私たちが目指す「顧客価値の創造」であり、お客様に「相談してよかった」と心から感じていただける関係を築くための道筋だと考えています。

この「顧客の創造」は本当に難しいことですが、一度できるとその方との関係性は強くなるという特徴があります。逆に、自らが創造したわけではない顧客は、弊社も選択肢のうちの一つにすぎず、関係性は相対的にどうしても低くなってしまいます。一人の営業担当者としての経験からすると、仕事をしていて充実感を覚えるのは前者のようなお客様との対話の時間でした。同じように、よりお客様に貢献できていた、感謝を頂いた、という感覚を持つのも前者のようなお客様との関係性によるものでした。そして「価値」に重きを置いているのも前者の顧客であり、後者の顧客は「価格」に重きを置いている方が多いのではないでしょうか。

ソーラーレジデンス北栄の事例を通して、「顧客の創造」という概念について改めて考える機会を得ました。今現在で全社的に理想の状態に到達しているとは言えない状況です。改善すべきことばかりです。
そういった中で、何か画期的な新商品や新サービスを展開する!とかのような一発逆転を狙うのではなく、「相談してよかった」と感じていただける瞬間を積み重ねるという地道なことこそが、地域社会に真に必要とされる不動産業者へと成長する道だと信じています。
こうした気付きをきっかけにしながら少しずつでも着実にチャレンジしていきます。あらためてその重要性に気づかせてくれた仲間に感謝しています。

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ライターについて

不動産業界には海千山千の人間が多くいます。私もこの業界にいることでオモテヅラだけがいいと感じる人に多く会ってきました。時に人を信じるということはとても大事ですが、その人がどのような状況に身を置いている人なのか、そして自分が今どのような状況に置かれているのかを冷静に俯瞰することで、より良い不動産取引体験につながることと思います。今回のコラムを読んだ方が一人でも不幸な不動産体験から縁が切れることを願って止みません。

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