私は浦安の地場の不動産業者の情報担当として、マスコミの方やシンクタンクの方とお話する機会が多いのですが、ここ数年決まって聞かれるのが「今まで右肩上がりだった浦安市の人口が減少に転じていますが、どうお考えですか?」ということです。
その質問に対してまずお話しするのが「実は、震災の前から人口が増えないことは浦安市の地区計画で決まっていたことなのです」ということです。
こうお話しするとたいていの方の目が「??」となります。恐らく期待していた答えは「震災で傷つき減少してしまいましたが、復旧復興に期待します」というようなことなのでしょう。
しかし、例え震災が起こらなかったとしても、人口はそれまでのようには増えなかったはずなのです。
■浦安市の人口の推移 2011年より減少傾向
見事な右肩上がりでしたが、2011年を境に減少しています。
続いて人口の増減を年齢層から見てみます。
これを見ると、減少した主な世帯層は20代30代の単身世帯と小学生以下の子どもがいる世帯である、と予想が付きます。新浦安エリアは傾いてしまったアパートも多いので(ちなみに液状化で倒壊したアパートはゼロです。液状化が原因で亡くなった方もいません)、身軽な単身世帯と子どもがまだ小さい世帯は引越したのではないでしょうか。明和地所の管理物件も新浦安エリアの単身用物件は当時は空室率が上昇しました。蛇足ですが、2013年の春に一気に空室が埋まり、ここ1年は物件不足状態です。
このように、震災の影響により今まで右肩上がりであった浦安市の人口は減少を辿ることになりました。しかし実は、震災が起こる5年前の2006年の地区計画の変更により、人口が今までのように右肩上がりで増えないことは決まっていたのです。
■浦安市による地区計画の変更
それまでの計画では、浦安市の湾岸エリアである日の出・明海・高洲は今まで同様に高層マンション・大規模マンションを建てられる地域になっていたところを、低層住居(高さ10mまたは12mが限度)に変更したのです。下記PDFの5ページ目が一番判りやすいと思いますので、ご興味あるかたはリンク先をご参照ください。
http://www.city.urayasu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/183/setumeikai.pdf (浦安市サイトより)
例えば3ヘクタールの土地が中高層住居専用地域であれば、1戸あたりの広さ100m2で総戸数600戸規模のマンションを建てることができ、人口約2500人程度が一気に増えますが、低層住居地域の場合は300戸程度が限界で、人口も1200人程度の増員になると試算できます。
また、分譲できる戸数が半減ということは、分譲会社としては売上げも半減になり、土地も今までの半値で仕入れないと利益が圧迫されるので、分譲計画もなかなか進まないことになります。
■新浦安エリア最後の大規模マンション
また、高洲8丁目の分譲マンション「プラウド新浦安パームコート」は2010年に発売されましたが、”「新浦安」エリア最後の大規模マンションプロジェクト”と銘打たれ販売されました。
震災とタイミングが重なってしまい人口が減少したのは事実ですが、今まで数千人単位で人口を増加させる大規模マンションを建てられる土地が2010年時点で無くなりましたので、それまでのように右肩上がりで人口が増えることは無くなっていたのです。
■人口が増えない、ということはマイナスなのか?
人口が増えない、というのはマイナスイメージではありますが、高度成長時代から今まで日本で行われてきた「新築住宅をバンバン建てて人口と消費を増やそう」というモデルは限界を迎えています。国土交通省も何年も前からストック重視(中古住宅重視)の姿勢を打ち出しています。大規模な新築マンションを抑制する方針をいち早く打ち出した浦安は、この国の方針にも合致しています。右肩上がりの時代を経て、成熟した町になるステップを踏んでいるものと、私は考えております。これからどんな町になるか、楽しみですね。
(冒頭の画像のキャラクターはチーバくんという千葉県の公式マスコットキャラです。この度、千葉県より弊社のホームページでの利用の許諾をいただきました。横から見た姿が千葉県の形をしている不思議ないきもの、だそうです。浦安市はベロの部分になります笑)
千葉県許諾 第A995-1号