2011年4月23日、マイステイズ新浦安にて、地盤工学会主催の「地盤工学セミナー」が開催されました。
東京大学の東畑郁生教授を講師とし、過去の各地での液状化被害の様子、今回の地震の特徴と液状化の発生メカニズム、そして液状化を防ぐための技術などを講演していただきました。
また、講演終了後には質疑応答の時間もあり、市民の皆様の質問を丁寧に回答して頂きました。
セミナーは地域情報サイト「新浦安ナビ」の協力もあり、募集開始から3日で定員の200名を超える応募がありました。
当日は松崎市長(当時の浦安市長)も聴講に来場するなど、今後浦安をより強い街にするために多くの市民の方々に足を運んで頂きました。
セミナーの様子
アンケートで頂いた質問への回答 (回答:明和地所代表取締役 今泉太爾)
Q.液状化する地層、しない地層を調べるには、どのような工事調査が必要で、どのような結果から判断すればよいのでしょうか?
液状化の危険性を確認するには、ボーリング調査と同時に地質調査を入れる事で、ある程度判定が可能です。
具体的には、表層部での地震動計算結果から地中のせん断応力を求め、液状化対象層ごとに液状化に対する抵抗率(FL)を求め、地層全体の液状化可能性指数(PL)を算出する事で評価が出来ます。
PL値は、ある地点の液状化の可能性を総合的に判断しようとするものであり、各土層の液状化強度(せん断応力に対する強度)を深さ方向に重みをつけて足し合わせた値です。
PL=0.0 | 液状化発生の危険性がない、あるいは極めて少ない |
0.0<PL≦5.0 | 液状化発生の可能性が低い |
5.0<PL≦15.0 | 液状化の可能性があり |
15.0<PL | 液状化の危険性が高い |
Q.一度液状化になった地盤は砂が締まり、水分が排出され、地盤強度が上がり、同程度の地震では液状化が発生しないと思いますがいかがですか?
セミナー中にも東畑教授からお話がありましたが、一度液状化した地盤の強度が上がって、同程度の地震で液状化しないという事は考えにくいでしょう。
地盤の締め固めというのはかなりの強度を要するものであり、地震で数回液状化した程度では「締め固め」と言えるレベルには程遠い状態です。
むしろ、垂直であった砂地盤の配列が斜めに崩れているので、同程度以下でも再液状化する可能性が高くなります。
数回程度の液状化ではより弱くなっていると考えた方が良いでしょう。
Q.岩盤はないとの先生の言葉にとても驚いています。だとしたらなぜ今回マンションの建物に大きな被害がなかったのでしょうか?
セミナー中にも東畑教授からお話がありましたが、南関東では岩盤は2千メートル掘らないと出てきません。
以上のことから岩盤はあるのかと聞かれると、無いと答えた状態です。
ただし浦安の場合は数十メートル下に一万年以上前からある比較的硬い地層があり、そこで十分に支持力を得る事が出来ております。
また、地盤の液状化は地表から20m以内でしか起こらないとされておりますので50m以上の長さのある杭構造のマンションには液状化による被害は「側方流動が無い限り」考える必要は無いといえます。
もし杭基礎に何らかの被害があれば、マンションに傾斜などの被害が出ているはずですので、傾斜などが起きていないのであれば被害がないと考えてよいのではないでしょうか。
Q.排水促進は浦安の液状化に効果あるか?
夢海の街がグラベルドレーン工法という排水促進型の液状化対策を施されております。
夢海の街の液状化被害を見ると、排水促進による対策効果が確認できます。
Q.家の傾斜を今後どのように直していくか。時期、工法、費用、業者などの情報が欲しい。
申し訳ございません。東畑教授はあくまで研究者であるため、具体的な業者名や費用などを公的に出せる立場ではいらっしゃいません。
また、セミナーでご紹介したとおり、各工法ともメリット・デメリットがありますので、ご紹介した技術を持つ業者を、地元の工務店を介して施工規模や基礎などのケースによってご相談・ご検討されると良いと思います。
なお、弊社で開催している東日本大震災対策セミナーでもご説明差し上げておりますので、よろしければご参加ください。
参加者の声
- 先生の個性あふれる本音のお話に大満足です。是非続編を企画してください。
- 液状化の現象がよくわかりました。わかり易い説明でした。ありがとうございました。
- 非常にわかりやすい説明(写真、図解)でした。参加してとても良かったです。ありがとうございました。
- 正しい知識を得ることができて大変有意義であった。ありがとうございました。
- 今回は専門家の意見を聞き、多くの人と問題を共有できた貴重な時間でした。明和地所さんにも今後復興をリードしていただきたいと期待しています。
主な講義内容
「地盤工学セミナー」~液状化のメカニズムと対策について~
- 浦安市での被害の形態
- 過去の液状化災害例
- 今回の地震の特徴
- 液状化が起こるメカニズム
- 液状化しやすい地盤とは?液状化を起こさせないためには
- 液状化を防ぐ技術
- 液状化危険度マップについて
- 質疑応答
講師紹介
東畑 郁生
研究分野は地盤の耐震問題、斜面の地震時挙動と防災、 廃棄物地盤の力学挙動など
1977年 東京大学工学部卒業。
1982年 東京大学大学院博士課程修了、工学博士。
1982年 カナダ・ブリティシュコロンビア大学博士研究員。
1985年 バンコク・アジア工科大学講師。
1987年 東京大学助教授。
1994年 東京大学教授。
1997年 地盤工学会論文賞受賞。
1999年 米国シャムシェールプラカシュ研究賞受賞。
2000年 地盤工学会研究業績賞受賞。
2004年 地盤工学会論文賞受賞。
2009年 土木学会出版文化賞受賞。
著書
- 地震と地盤の液状化
- Geotechnical Earthquake Engineeringなど